連休初日の朝。
カーテンの隙間から光が入ってきたけれど、なんちゃんはまだ布団の中にいた。
目覚ましも鳴らないし、今日はゆっくりしていい日――のはずだった。
「おねえちゃーん!起きて起きて起きて!!」
布団の上でぴょんぴょん跳ねる影。
ミチだ。しっぽをぶんぶん振りながら、朝からやけにテンションが高い。
「まだ朝だよ……。連休なんだから寝かて……」
そう言って布団に顔をうずめるなんちゃんをよそに、ミチは満面のドヤ顔。
「違うよ?
“連休だから”起きるんだよ!」
「……それ、理由になってないよ」
ミチは聞いていない。
キッチンに走っていき、コーヒー豆を勝手に並べたり、窓を全開にしたり、完全に休日モード全開だ。
「ほらほら、空気がおいしい!
今日はね、掃除もしない!
出かける予定も決めない!
“だらだらするための一日”なの!」
「それを実現するために、
なんでそんなに動いてるの……」
呆れながらも起き上がるなんちゃんの横で、ミチは満足そうに丸くなる。
「だってさ、連休って“何もしない”って決めるのが一番むずかしいでしょ?」
なんちゃんは一瞬だけ考えて、ふっと笑った。
「……たしかに。
放っておくと、つい予定入れちゃうもんね」
コーヒーを飲みながら、なんちゃんはミチを見る。
朝から元気すぎる理由が、まだはっきりしていない。
「……で、さっきから気になってたんだけど」
「なに?」
「今日は“何もしない日”って言うけど……
本当は、何か理由あるんでしょ?」
ミチは一瞬だけ目をそらして、しっぽの先をくるっと丸めた。
「……あるけどさ」
少し間を置いて、ぽつりと言う。
「平日さ、なんちゃんずっと忙しそうだったでしょ。
朝は相場、夜も相場。
ミチが話しかけても、“あとでね”って言われること多かったし」
「……」
「だから今日はね、
“何もしない日”って決めないと、
どうせまた予定入れちゃうと思って」
ミチはなんちゃんの袖をちょん、と引っ張る。
「今日はさ、
ミチのわがままでいい日なの。
一日くらい、なんちゃん独り占めしてもいいでしょ?」
なんちゃんは少し驚いて、それから困ったように笑った。
「……それ、わがままって言うの?」
「言うよ。
でも今日は“連休初日”だから特別ね」
少し考えてから、なんちゃんはソファに座り直した。
「じゃあ今日は、
ミチのわがままを叶える日にしよっか」
ミチの耳が、ぴん、と立つ。
「ほんと!?
じゃあまずは……二度寝!」
「結局そこ!?」
そんなやりとりをしながら、
2人はまた並んでソファに沈み込む。
今日の予定は、何もない。
でもそれは――
ミチのわがままが、ちゃんと叶えられる日という意味だった。
