休日の午後。
特に目的もなく、なんちゃんとミチは近所のスーパーに来ている。
夕方前の店内は、少しだけ静かで、
エナジードリンクの棚だけが妙に派手だった。
黒、紫、青。
「頑張れ」「限界突破」「覚醒」みたいな圧が強い。
ミチは棚の前で足を止める。
ミチ
「ねえ、なんちゃん」
なんちゃん
「……嫌な予感がする」
ミチ
「エナドリは無理でもさ、
“今日は何もしない日”ドリンクとかどう?」
なんちゃん
「それどんな効果があるの?」
ミチ
「飲んでも何も起きないやつ!
元気も出ないし、集中力も上がらない。
ただ“今日は休んでいい”って気分になるだけ」
なんちゃん
「それただの水だよ……」
ミチ
「でもさ、“水”って書いてあったら選ばないでしょ?」
ミチは一番目立たない棚の下段を指差す。
そこには、地味なパッケージのミネラルウォーター。
ミチ
「本当は、こういうのが一番必要な日もあるのに」
なんちゃんは少し黙ってから、その水をカゴに入れる。
なんちゃん
「じゃあ今日は、これにしよっか」
ミチ
「やった。今日は“何もしない日”!」
レジに向かう2人の背中は、
どのエナジードリンクよりも、ずっと軽そうだった。
