女友達の彼氏から連絡が来たのは、平日の夜だった。
「ちょっと相談に乗ってほしいんだけど」
内容は、女友達のお金の使い方について。
最近やけに荒いらしい。
それを心配している、という建前。
場所は、駅近くの落ち着いた居酒屋。
半個室で、声も外に漏れない。
向かい合って座るはずだったのに、
なぜか横に来られた時点で、少しだけ違和感があった。
距離が近い。
肘が触れそうで触れない、その位置。
「いや、ほんと困っててさ」
そう言いながら、視線が定まらない。
話はお金の管理なのに、
目線だけが、何度も下に落ちる。
……ああ、そっちか。
女友達は、正直小さい。
だから余計に、比べられている気がした。
遊び人だって話は、聞いている。
軽い人。
距離感が曖昧な人。
わかっているのに、
イケメンなのが、厄介だった。
グラスが空くたび、
さりげなく注文される。
「今日は俺が出すよ」
その言い方が、やけに自然で。
お金の話をしているはずなのに、
空気だけが、少しずつ別の方向に寄っていく。
「みっちゃんは、しっかりしてるよね」
褒め言葉の形をした言葉が、
やけに低い声で落とされる。
友達の顔が、頭をよぎる。
奪う気なんて、ない。
それだけは、絶対。
でも――
近さと視線と、余裕のある支払い方。
全部が、判断を鈍らせる。
会計のタイミングで、
彼が一言、静かに言った。
「このあと、少しだけ…どう?」
誘いは短く、逃げ道も用意されている。
断れる形。
だからこそ、迷う。
みっちゃんは、笑ってグラスを置いた。
答えは、まだ出さない。
選ばないという選択も、
ちゃんと意思だから。
🧭 今日の道しるべ
あなたは、
「揺れたけど選ばなかった理由」を
言葉にできますか?
