週明けの月曜。
朝は、ゴミの日。
眠気と現実を引きずりながらも、
今日はちゃんと朝にゴミを持って外に出た。
理由は、たぶんわかってる。
先週末。
あの夜。
壁越しに聴こえてきた歌声。
月曜の仕事の憂鬱よりも、
頭の中は、なぜかそっちでいっぱいだった。
——こういうときに限って、会うんだよね。
ゴミ捨て場に着くと、
やっぱりいた。
お隣さん。
まだ勝手がわからないのか、
分別の前で少し困った顔をしている。
「それ、燃えるゴミで大丈夫ですよ」
声をかけると、
ぱっと顔を上げて、少し安心したように笑う。
……あ。
今日は、ちゃんとメイクしてきてよかった。
普段はすっぴん。
でも今日は、なぜか「会いそうな気がした」。
直感って、当たる。
「ありがとうございます。まだ慣れてなくて」
相変わらず、礼儀正しい。
その感じが、ずるい。
しかも今日は——
胸じゃない。
ちゃんと、目を見て話してくる。
それだけで、心拍数が上がるなんて、
自分でも単純だと思う。
ふと、彼の持っているゴミ袋に目がいく。
中が少し透けて見えて、
高そうな箱や、見慣れない包装。
……やっぱり、余裕ある生活。
顔も悪くない。
お金もある。
礼儀正しくて、歌も上手い。
今のところ、
欠点がひとつも見当たらない。
——それって、逆に危ない。
「じゃあ、行ってきます」
そう言って、彼は軽く会釈する。
その後ろ姿を見送りながら、思う。
これで何も感じないほうが、
おかしいよね。
自分の心に、正直になる。
それだけで、少しだけ足取りが軽くなる。
月曜の朝。
仕事は憂鬱なはずなのに。
今日は、
悪くない一日の始まりだった。
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▶︎ ep5:仕事終わりのスーパーで
🧭 今日の道しるべ
相手の「条件」じゃなく、
視線や距離に心が動いたとき。
それは、もう気づいてしまった合図かもしれません。
