なんでも道しるべ

資産運用は、判断よりも耐える時間が長い。 数字と感情の間で揺れながら、日常の出来事と一緒に綴る記録。 案内役は、ちょっとツンな相棒「みっちゃん」。 — 資産運用・投資の記録ブログ

🐾 みっちゃんの日常|シーズン2 エピソード6 「シチューの温度と、見てしまった名前」

帰ってからも、ずっと落ち着かなかった。


頭の中はふわふわしていて、

何かを考えようとしても、すぐに別のことが浮かぶ。


鍋に火をかけて、

野菜を切って、肉を入れて、

ルーを溶かして。


気づいたら、シチューができていた。


……多い。


明らかに一人分じゃない量。

ぼーっとしてた証拠。


しばらく鍋を見つめてから、

小さく息を吐く。


「……持っていくか」


今は正直、顔をちゃんと見られる自信はない。

でも、この量を一人で食べるのも違う。


そう思って、鍋を持った。


ピンポーン。


インターホン越しに聞こえる足音。

ドアが開く。


彼はまず、私の手元を見た。

それから鍋。

次に、顔。


一瞬、間があって。

子どもみたいな笑顔。


「……え、シチュー?」


「作りすぎちゃって」


それだけ言うと、

彼は少し目を丸くしてから、すぐに言った。


「よかったら、一緒に食べませんか?」


そんなつもりじゃなかった。

でも断る理由も見つからなくて。


気づいたら、また彼の部屋にいた。


二回目だから、

部屋自体にはもう緊張しない。


でも——

彼を見ると、だめだった。


美味しそうに食べる横顔。

スプーンを動かす指。

たまに合う目。


「美味しいです」


その一言で、

胸の奥がじんわり熱くなる。


食べ終わって、片付けて。

テーブルに向かい合って座る。


たわいのない話。

大学のこと、仕事のこと。


……内容は、ほとんど覚えていない。


彼が、やけに格好よく見えて。

空気が、少しだけ近い。


そのとき。


彼のスマホが鳴った。


画面が、ふと見える。


——女性の名前。


それだけで、

一気に現実に引き戻された。


「あ、私そろそろ……」


立ち上がると、

彼は少し驚いた顔をしたけど、

止めなかった。


部屋を出て、

ドアが閉まる。


廊下の静けさの中で、

ようやく息をする。


……そうだよね。


勝手に期待して、

勝手に熱くなって。


自分で、自分にブレーキをかけた。


鍋の余熱みたいに、

胸の奥はまだ温かいままなのに。

 


▶︎ sp7 へ続く

「お隣の大学生の彼女、登場」

 


🧭 今日の道しるべ

“何も起きなかった夜”ほど、

心に残る理由は何でしょうか。

 

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