一週間が、やっと終わった。
シチューの夜と、あの着信。
考えないようにしても、頭の奥に残っている。
ドキドキと、落ち着かなさ。
それがずっと続いていた。
この一週間、
お隣の彼と会わなかったのが、唯一の救いだった。
そして週末の夕方。
家の前まで戻ってきた、そのとき。
玄関の前で、
視線が、ぶつかった。
——お隣の彼。
一瞬、言葉が出なかった。
そして、彼の隣に立っていた女性に、
遅れて気づく。
知らない人。
彼女のほうが、先に口を開いた。
「どうも〜」
軽くて、迷いのない声。
彼女は、みっちゃんとはまったく違うタイプだった。
細くて、背が高くて、
服の着こなしも洗練されている。
胸は目立たないけれど、
その分、モデルみたいな雰囲気。
三人で立ち止まるほどの時間はなかった。
みっちゃんと彼は、無言のまま。
軽く会釈して、それぞれの家へ向かう。
すれ違いざま、
彼女の声が聞こえた。
「……今の人、だれ?」
それだけ。
玄関のドアを閉めた瞬間、
胸の奥が、ぎゅっと縮んだ。
その夜。
布団に入って、明かりを消しても、
気持ちは落ち着かなかった。
——聞こえる。
壁の向こうからの、気配。
言葉ではない。
でも、確かに声。
抑えているのに、隠しきれていない響き。
このマンションは静かなはずなのに、
それでも伝わってくる。
耳を塞ぎたいのに、
体が動かない。
ただ、天井を見つめて、
息を整えるしかなかった。
知らない女性。
お隣の彼。
同じ夜。
それだけで、
みっちゃんの胸は、苦しくて仕方なかった。
⸻
▶︎ sp8|大学生と、彼女の喧嘩
🧭 今日の道しるべ
胸が苦しくなるほどの気持ちは、
「奪いたい」から生まれるのか、
それとも
「届かないと知った」から生まれるのか。
あなたは今、
どちらの痛みを抱えていますか?
