昨日の記事で、ベンチマークについてと、アンダーパフォームとアウトパフォームについて書きました。
ベンチマーク(運用指数)に対するアンダーパフォームとアウトパフォームとは? - なんでも道しるべ
私は有名な先生の著書に出会って、そして自分の性格にあった運用方法を模索しています。
マルキール先生は、アクティブファンドはインデックスファンドに勝てないというデータに基づき、インデックスファンドを推しています。
マルキール氏のウォール街のランダム・ウォーカーを読んでインデックス投信に目覚める - なんでも道しるべ
シーゲル先生は、インデックスだけでポートフォリオを構成するのではなく、リターン補完戦略として投資の50%を高配当・グローバル・セクター・バリューなどに振り分けるように推奨されています。
株式投資一発退場!「成長の罠」に引っかかるな。シーゲル先生の超有名本の紹介。 - なんでも道しるべ
昨日の記事でも少し触れましたが、最近では、スマートベータの運用方針が注目されています。
国内株式の場合は、「JPX日経インデックス400」がそれに当たり、有名です。
今日は、私も勉強中ですが、スマートベータ運用について考えてみたいと思います。
■アクティブ運用とインデックス運用
投資信託の運用方法には、アクティブ運用とインデックス運用があります。
インデックス運用は、相場の運用指数に連動するように設計されているため、パッシブ運用(消極的な運用)と言われています。
しかし、アクティブ運用(積極的な運用)はパッシブ運用に勝てないというデータが、米国では非常に有名です。
その訳は、アクティブ運用はコスト(信託報酬や売買手数料など)がかかり過ぎるため、コストを安く抑えることができるパッシブ運用に勝てないという理屈です。
私の考えでは、これは右肩上がりの成長曲線を描いている米国だから起きている現象だと思っています。
実際、日本では、アクティブ運用は米国ほど負けていないデータも出ているようです。
■スマートベータをいう考え方
しかしながら、パッシブ運用いわゆるインデックス運用は、アクティブ運用と比較して最も大きなデメリットがあります。
それが、「超過リターン」です。投資の世界では、この超過リターン(収益)のことを「アルファ」と呼ばれているようです。
当たり前ですが、市場の指数に連動する消極的な運用なので、超過リターンなど得られるわけがありません。
逆に超過リターンを得ているインデックスファンドは、指数にアウトパフォームしていても、運用が下手なファンドとして評価されます。
インデックスなので、指数に連動することを目指しているわけですから、当然ですよね。
そこで、アクティブ運用ほどリスクは取りたくないけれど、インデックス運用よりも少しはリターン超過してほしいな、という「ええとこどり」の運用をするべく開発されたのが、スマートベータです。
「ベータ」とは、市場との指数連動性や感応度を示します。したがって、「スマート」な「ベータ」ということで、「賢い指数」ということですね。
スマートベータは、日経平均やTOPIXなどの市場平均に勝つ株価指数ということをコンセプトにしている指数で、市場全体の動きを上回ることを目指します。
ただ、アクティブ運用のファンドマネージャーの選択ではなく、基準が明確に決まっていますので、全てを任せて何も知らないといったことよりも運用リスクは低くなるのが目的です。
■米国ETFのHDVはスマートベータ運用!?
JPX日経インデックス400は、利益水準、自己資本利益率(ROE)、時価総額からスコアリングし、さらに、社外取締役の数や英文開示などの定性的評価も加えて、構成銘柄を選んでいます。
この指数が有名になったのは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がスマートベータを採用したことから、日本国内で注目されたようです。
私も最近になって、スマートベータ指数による運用というものに興味が出てきましたが、実は私が保有している米国ETFに、このスマートベータの考え方を採用しているETFがありました。
それが、ブラックロック社が出している「iシェアーズ・コア 米国高配当株ETF」(HDV)です。
このETFは高配当株で構成されているので、高配当株式のETFのグループだと思っているだけでした。
同じようなETFはバンガード社からVYM(米国高配当株式ETF)が出されていますが、構成銘柄が400銘柄以上あります。
逆に、このHDVは75銘柄に絞られています。
この銘柄選択の考え方が、スマートベータの考え方であり、米国株で日本から投資できるETFとして有名なようです。
私自身、ここまで知って買付保有をしたわけではありませんが、後から考えると、HDVは非常に面白いETF構成銘柄の選択をしていることが分かります。
HDVの紹介パンフレットからの抜粋ですが、下記のようにしか書かれていませんでしたので気づきませんでした。
- 米国の有名、優良企業の株式に投資します。
- 財務状態が健全であり、配当金を支払っている企業の株式75銘柄に投資できます。
- インカム獲得を目指すために活用できます。
このなかの「財務状態が健全であり」という部分で、各種の財務指標など基準に魅力のある銘柄を組み入れているのだと思います。
実際に、このHDVは銘柄回転が高いということでも有名です。それだけ、優良な75銘柄を選ぶのには入替えが必要なのかもしれません。
2017年3月のデータですが、HDVのS&P500に対するベータは0.61ということで、1が指数と同じ連動ということなので、それの0.61倍の感応度しかないということで、値動きが緩やかだということです。
逆に、キャピタルゲインにより売買利益を出す人には、感応度が低いので面白くないかもしれませんが、長期保有でインカムゲイン取得を目指す人には良いETFだと思います。
■アクティブファンドにも頑張ってほしい願い
スマートベータが注目されていることで、市場指数よりもアウトパフォームするインデックス運用が可能となり、アクティブ運用の存在性が脅かされているようです。
ファンドマネージャーは、これまでインデックスファンドよりも高いリターンを上げておけば、信託報酬(コスト)が高くても、投資家には説明がついていましたが、これからはスマートベータ指数よりも上回っていることも必要性が出てくると思います。
スマートベータ指数連動のファンドが低コスト(低信託報酬)で運用されるようになり、このパフォーマンスが良好になると、アクティブファンドからスマートベータファンドに資金が流れてしまいますね。
スマートベータに関連する指標が注目されていることが本当に良いことなのかどうかは、企業運営や経済への投資の観点からは、私は若干の疑問を感じることはあります。