投資信託について新たなニュースです。
金融庁が投資信託を販売する銀行や証券会社に対して、共通指標を設定して、統一基準で算出・公表するように求めるということです。
これは、「顧客本位の業務運営」を進めるための処置とのことですが、なぜこのような要求が出てくるのか?という裏読みで考えてみようと思います。
■金融庁が銀行証券会社に求める3点
金融庁は、毎年3月末を基準日にデータを算出するように求めるということです。
各銀行や証券会社に求める内容は、以下のとおりです。
- 投信とファンドラップの運用損益別顧客比率
- 投信の預かり残高上位20銘柄の購入コストとリターン
- 投信の預かり残高上位20銘柄のリスクとリターン
まず、1.の運用損益別顧客比率ですが、これって、インベスターリターンの比率のことなのかな?と思っています。
基準価額が上がっていても、当然、市場は波を打つわけですから、積立の下手な顧客が多い場合は、損をしている顧客が多いことになります。
逆に基準価額はそれほど上昇していなくても、安値でもしっかりと積立をしている顧客が多いファンドは、利益を上げている顧客が多いことになります。
このインベスターリターンは、私はセゾン投信から示されたのを初めてみましたが、その他のファンドでは見たことがありません。
これを示すように求められると、厳しいファンドはあるかもしれませんね。
これまでは、数値の側面では、基準価額の騰落率をみながら、純資産総額を眺めるということが多かったです。
確かに、その他の数値データもありますが、直接的ではなく解釈が伴うので、判断に迷うものが多かったです。
対して、顧客比率となると、簡単に比較することができるようになるので、ファンド選択には有効な数値なのかもしれません。
■上位20銘柄の情報は本当に有用なのか?
2.と3.に関してですが、上位20銘柄の情報が出るのは、良いのか、悪いのか。
ファンドの報告書をみていると、上位10銘柄の情報を出しているファンドが多いのですが、20銘柄に増やしたのは何故なのか。
銘柄数の情報が増えても、全体で運用しているので、あまり意味があるように私は感じられなかったです。
逆に、情報がありすぎると混乱することになりますので、20銘柄の情報の意味が理解できなかったです。
また、2.と3.から、これらの上位銘柄の、「リターン」「リスク」「購入コスト」の情報が出るということです。
リターンは私のような素人にも意味がわかりますが、「リスク」というのは標準偏差のデータが出てくるのでしょうか。
銘柄個別のリスクを知ったからといって何になるのかな?と正直思います。
リターンも同じですが、リスクにしても、上位20銘柄だけの情報があったとしても、それはファンド全体を示しているわけではないので、方向性に疑問があります。
一番分からないのが、「購入コスト」です。
これって、銘柄売買コストだけを示しているのでしょうか?
当然、海外銘柄の場合は為替コストなども関係してくると思いますが、アクティブファンドの場合は調査コストも出てくるのでしょうか?
この「購入コスト」というのが、最も意味が分かりませんでした。
■金融庁の新たな指針から考える
このような情報が出てくるのは、ファンドを分析する人にとっては、新たな情報なので面白いかもしれませんね。
私のような素人には分析能力がないので、分析してくれる人の情報を見ながら、ファンド選別の材料にしたいと思います。
では、なぜ、金融庁はこのような情報を出せというのか?ということですが、裏読みすると、やはり手数料などのコストが高いことによる損をしている人が多いということでしょうね。
また、インベスターリターンにより、回転営業を抑止するのも狙いなのかもしれません。
どちらにしても、我々のような個人投資家がもっと情報を集めて、投資をする必要があるということでしょう。
対面営業が安心という一つだけで、高コストのファンドを勧められて多額の資金を投入したり、無駄なコストを意識しない行動したりするのが問題だということかと思います。
結局は、金融庁が新たな指針を出したとしても、銀行や証券会社で勤めている人は仕事でやっていますから、利益を上げなくてはいけないわけです。
利益を上げるためには、量を取るか、質を取るかということになりますが、量を見込めない日本人に対しては、質を取るしかなくなっているのも確かです。
金融庁が「貯蓄から投資へ」の働きかけを急いでいる感じもしますが、指針や規制を強化しても、売る側と買う側の意識が変わらない限り、難しいと思ってしまいます。
現状は過渡期であることを認識して、個人投資家も過度な意識をしたり、食わず嫌いな行動に出たりしないで、合理的な選択をするのが将来のためになるのだと感じますね。
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