なんでも道しるべ

資産運用は、判断よりも耐える時間が長い。 数字と感情の間で揺れながら、日常の出来事と一緒に綴る記録。 案内役は、ちょっとツンな相棒「みっちゃん」。 — 資産運用・投資の記録ブログ

🐾 みっちゃんの日常|シーズン2 エピソード10(最終回) 「触れなかった理由と、開いてしまった扉」

会話は、途切れなかった。


彼は、ゆっくりと言葉を選ぶように話した。

みっちゃんが、どうして頭から離れないのか。


「優しいし、料理もできるし……大人で」


そう言われるたびに、胸の奥がじんわり熱くなる。

嬉しいのに、同時に不安も湧く。


彼女の存在。

それから――年下の大学生、という現実。


(私より、学生の子のほうが合ってるよね)


そう思ってしまう自分がいる。

でも、視線が絡むたび、身体は正直だった。


距離が、近い。


言葉は減っていくのに、空気だけが濃くなる。

目を逸らす理由を、どちらも失っていた。


顔が、少しずつ近づく。

触れるか、触れないか――


その瞬間。


着信音。


彼のスマホだった。


画面に表示された名前を見て、

みっちゃんの心臓が強く跳ねる。


――お母さん。


一気に現実に引き戻される。

彼も、はっとした表情で通話に出た。


電話の向こうから聞こえる、日常的な声。

「明日、そっち行くから」


その一言で、さっきまでの空気が、嘘のようにほどけた。


通話を終えたあと、二人は視線を合わせない。

今日は、ここまで。


続きは、また今度。

そういう距離感で、別れた。

 

 


翌日、日曜日の朝。


エントランスに、見慣れない車が止まった。

ちょうど外に出ていたみっちゃんは、足を止める。


彼の両親。

……それだけじゃなかった。


後部座席から降りてきたのは、

やけに元気そうな、大学生くらいの女の子。


「うわー!久しぶりー!」


その声に、彼は一瞬で顔をしかめた。


「……げ」


八年ぶり、らしい。


母親の話では、

今朝たまたま再会して、

「一人暮らし見たい!」と言われて連れてきたとのこと。


――偶然にしては、出来すぎている。


みっちゃんは、その様子を少し離れたところから見ていた。

胸の奥で、何かが静かにざわつく。


これは、終わりじゃない。

むしろ――


波乱の始まり。

 


▶︎ シーズン3 へ

sp1「同級生は、幼馴染の関係」

 


🧭 今日の道しるべ

触れなかった一瞬は、

「理性」だったのか、

それとも――

次に進むための、準備だったのか。

 

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